真夜中の踏切に潜む赤光
何だか無性にビールが飲みたい夜だった。
しかし、飲むことが出来ない。
夜遅くまでアルバイトをしていた弟を、車で迎えに行かなきゃいけないからだ。
22時30分「迎えよろしく。」弟からのLINEがきた。
自宅からアルバイト先まで15分ぐらいだ。
早速、車に飛び乗り迎えに行った。夜が更けると、人通りも少なく、車も少ない。
予定よりもスムーズに弟を拾うことに成功した。
「よし、速攻帰ってビールを飲もう!!」そう思っていた。
その焦りがあってか、道を間違い、いつもと違うルートで帰ることになった。
一つの長い下り坂に差し掛かった。目の前には、踏切があり、
その先には、今にも赤に変わりそうな信号があった。
踏切に差し掛かる間に、教習所での事を思い出した。
「踏切に入る前には、一時停止をして、窓を開けて、耳でも電車が来てない事を確認する事が大切です。」
自分は、選択を迫られた。
一時停止をする or 線路を駆け抜け、信号が赤に変わる前に通過する。
僕が無意識に選択したのは、後者だった。おそらく、ビールが飲みたかったのだ。
ブルー免許になった自分は、運転が上手かった(そう思っていた)ので、信号が赤に変わる前に、見事に通過したのだ。
そして、数十メートル進んだ時、
バックミラーに赤い光が反射した。何だか不気味な声も聞こえている。
「あ、選挙カーかな。」いや、夜中に走っているはずもない。
『パトカー』だった。
怖そうなオマワリさんに、ブルーの免許を差し出す気持ちは、当然ブルーだった。
自分が兄貴らしいところを見せようと思った手前、弟の前で醜態を晒すことになった。しかも、この日に限って弟は夕飯を、まだ食べていなかった。
「ありがた迷惑」とは、このことだった。
そして、メンドくさい手続きを終えて、
オマワリさんから2点とチケット(9000円)をもらった。
それから、自宅までの運転は、教習所の教官も目を見張るほどの、
「安全運転」だった。
そして自宅に到着し、待ちに待ったビールを飲んだが、いつもより苦味を強く感じた。