色々の人生。 

何気ない出来事に面白い気づきがある。そんな気づきを残したい。お好みの話を見つけてみて下さい。

ウィンガーディアム・レヴィオーサ

f:id:eassY:20170919083229p:plain

私の膝の裏には、30cmほどの大きな傷がある。

形は、ハリーポッターの額の傷とそっくりの稲妻模様。

 

この傷は、以前に書いた『人生初の手術の話』の時に負ったものである。

今回は、その術後の話を書きたいと思う。

 

手術後3日が経過した頃であろうか、

沢山の人達がお見舞いに来てくれるようになっていた。

 

中でも、学校の同級生は特別だった。見慣れた彼らの顔を見た途端、

手術の時に感じた恐怖や、思うように動かない足に感じていたストレス等、

全てを一瞬で忘れる事が出来た。

 

持つべきものは、”友”である。

 

彼らは、お見舞いの品も持って来てくれた。

・みかんゼリー

・エロ本3冊

 

私は、思った。

他に買ってくるものは、なかったのかと。

なぜ、入院すると、この2品が定番になるのであろうかと。

 

 確かにみかんゼリーは可もなく不可もなくである。

しかし、問題はもう一品の方だ。

 

彼らが来てからの入院生活は、必死にエロ本を管理する日々に変わっていった。

 

 

私の右膝は、6時間に及ぶ大手術をしたばかりである。

足は包帯でグルグル巻きで、一人で立ち上がる事も出来ない。

 

この状態で3冊のエロ本を、

お見舞いに来る両親や美人ナースに見つからずに管理し続ける事は、

非常に困難な事だった。

 

人は、何かを失うと、何かを手にする。

私は、身動きが取れない分、creativityを手に入れた。

 

私は、3冊のエロ本を自分のベッドの板とマットの間に忍ばせた。

終日寝たきりである自分の真下にあれば、常に管理出来ると考えたのだ。

 

その姿はまるで、賢者の石を守る3つの頭を持つ番犬のようだった。

いや、守っていたのは、石ではなく、賢者モードになるための魔本だった。

 

私には、守らなければならないという”賢者の意思”があった。

 

 

 

 術後1週間が経過した頃、

私は、車椅子で移動する事が出来るまでに回復していた。

 

移動可能となった私は、少しばかり羽を伸ばしに、

病室の外にある公共スペースに繰り出した。

 

「やっぱり、外の景色の眺めは、なんだか気持ちいい。」

 

・・・??

 

何かが見えた。外の景色を眺めていた為、直視は出来なかったものの、

私の間接視野に何かが確実に見えた。

 

 

病室の清掃員の方々だった。

 

シーツ、枕、ベッドマットなどを交換する大掛かりな清掃が始まっていたのだ。

 

「終わった、、、。」

 

私のベッドの下には、3冊の魔本が隠されている。

私は、マグルではない。魔法使いである事がバレてしまいかねない。

 

祈る事しか出来なかった。

 

清掃が終わり、恐る恐る病室に戻ってみると、

隠していたはずの3冊のエロ本が、ウィンガーディアム・レヴィオーサしていた。

f:id:eassY:20170919083133p:plain

 

 清掃員の方々が綺麗にベッドメイキングしてくださったそこに、

綺麗に3冊の魔本が表紙を上にして置かれていた。

 

私の秘密の部屋は、完全に開かれてしまっていた。

この日の夜は、さすがのバジリスクも大人しかった。

 

こんなにも、透明マントがあったら被りたいと思った日はない。