10万円のイチゴ狩り
大学1年の11月に運転免許を取得した。
教習所を卒業する時、
「免許取ってから沢山運転した方が上手くなるよ!」
「安心して運転しなくなるとペーパーになって忘れちゃうからね」
と教官から最後のお言葉を頂いた。
自分は、とにかく免許取得後も運転を続ける決意をした。
なぜなら、皆さんが思ってる以上に、大学1年次に運転免許を持っていることは、
同級生の男の中では、アドバンテージであり、ステータスになり得たのだ。
シンプルに言えば、モテるはずなわけだ。
猛練習の挙句、そこそこの運転スキルを身につけた3月、
ずっと気になっていた中学時代の女友達を乗せることにした。
「免許取ったんだ!!」
「まぁ〜ね〜」
「イチゴ狩り連れてって!」
「あぁ、いいよ〜」
可愛い女の子に「イチゴ狩りに連れていって♡」と言われて断る男がいるだろうか。
私は、甘い甘いイチゴを目指してドライブする事が決まったのだ。
出発の数時間前、
女の子を乗せる前の男の下準備が始まった。
まずは、とにかく匂いチェックだ。ファブリーズを振り撒きまくった。
次に、小さなゴミの除去。謎のゴミが落ちていたりする。
そして、ナビに目的地をセット。道をミスるのは、最高にダサい。
最後に、洗車をしてピカピカに。彼女が車を見た時の第一印象が一番大事だ。
準備は完璧だ。これでイチゴと彼女を同時にもらった〜〜!と浮かれていた。
そして、待ち合わせ時間に彼女を拾い、イチゴ狩りドライブがスタートした。
完璧な下準備をしたこともあり、目的地手前まではスマートに到着した。
しかし、目的地手前で私に試練が訪れた。
私たちが登って来た山道から、イチゴ狩りが出来るビニールハウスに行くためには、
傾斜50度ぐらいの短い坂を登らなければならなかった。
しかもその坂には、真っ直ぐ侵入出来ない。
ほぼ180度曲がりながら侵入するしかなかった。
豊洲のヘアピンカーブのインコース側のような曲がり具合だ。しかも、傾斜50度近くある上に、ほぼ車幅と同じぐらいの道幅だ。
免許取り立ての私には、相当難易度が高かった。
しかし、助手席には彼女が乗っている。言い訳は出来ない。
ミスは許されないと思った。
いや、チャンスとすら思った。
なぜなら、この坂を登る事の難しさは、彼女も確実に感じていたはずだ。
だからこそ、この坂を涼しい顔で登りきる事が出来た時、
彼女は、イチゴなんかよりも私を欲しがると思ったのだ。
いざ決戦の時が来た。
とにかく一番重要なのは、ゆっくりでもいいから車に傷を付けず、登りきる事だ。
一番リスクが高いのは、車の両サイドだ。ほぼ車幅と同様の道幅しかない。
少しでもハンドルを切り過ぎれば、車はズタボロになる。
そろ〜りと車を進め、坂に車の頭部分が侵入し始めた。
車の両サイドを気にしながら進めていた時、想像以上に50度の傾斜が私達を苦しめた。
クリープ現象だけでは、車が坂を下ってしまうのだ。適当な加減でアクセルを踏む必要があった。
頭の中で気にしなければならないポイントが増えて来た。
しかし、私だって何ヶ月間も座学と実技を重ねて免許を取得したのだ。
ナメてもらっては困る。
なんとかあと一歩のところまで来た。
車の両サイドを擦る心配は無くなった。
あとは、アクセルを踏み込み、一気に坂を駆け上るだけだ。
最難関を超えて、助手席の彼女を見ると、
「かっこいい〜!!!!」って言う目をしているように見えた。
私は、アクセルを勢い良く踏んだ。
「ガッガッガッ、ガリバリバリ、ッガッガン」
・・・????
体に響くような大きな音がした。確実に何かが起きていた。
しかし、確実に車の両サイドは擦っていない。最難関はクリアしているはずだ。
降りて確認したいが、傾斜50度の坂を登っている途中だ。
車を停めて、降りることも出来ない。とりあえず、坂を登り切ることにした。
その時の彼女の顔は、赤くなる前のイチゴみたいな色をしていた。
坂を登りきったところで、私は車の周りを確認した。
まずは、運転席側のサイド。何もなっていない。
次に、車の前方を回って、助手席側のサイド。何もなっていない。
やはり、何かの間違いか。
車の後ろに回った。私は、寒気がした。
車の後ろ部分の部品が外れまくっていたのだ。取れた部品が地面に垂れ下がっている。
車の後ろを擦ったのではなく、車体の後ろ側の下の部分が50度の傾斜によって地面に接触していたのだ。その状態で勢いよくアクセルを踏んだため、車体の下の部分を擦りながら坂を駆け上がってしまったのだろう。
「ヤベーやっちまったww ま、でも帰るのに影響はなさそうだから余裕だろ、、!」
なんとも痛々しい。
その時の私の顔は、赤くなる前のイチゴみたいな色をしていたことだろう。
しかし、今ここで考えたところで解決策はない。
とにかく、まずはイチゴを狩ることにした。
ビニールハウスに入り、受付をしようと「大人2人で!」と言うと、
「今日は、終わってしまいました。」と一言。イチゴ狩りは出来ませんでした。
ある意味、今日の私は、終わってしまいました。
彼女もさすがにガッカリしていた。
結局イチゴ狩りもせず、彼女を家に送り届けた。
そして、私は家に帰り、両親にボロカスに怒られました。
「修理費は、あなたの成人祝いから出します。」
私は、1月に成人して、親戚から成人祝いをもらっていたが、
全て失ってしまいました。
これが、私の10万円の成人祝いで買った思い出です、、。
最後まで、読んでいただいて、
センキュー ベリーベリーベリー マッチ。