iphoneを手にした愚かな男の話
iphoneを初めて買ってもらった時、
何か長年背負ってきたプレッシャーから解放されたような気がした。
「今日から、いつでも、どこでも、見放題だ!!」
勘の鋭い人や、男子学生ならお気づきだろう。
無論、エッ◯な動画のことだ。
「見放題だ!」ぐらいで気づいた人がほとんどではないだろうか。
女性の方には、分からないかもしれないが、
男性にとっては、人生の最重要事項と言っても過言ではない。
私は、このiphoneという最新機器を手にすることを心待ちにしていた。
iphone購入以前も携帯を持っていたが、
やはり大きな液晶で解像度の高い映像を見れることは、技術革新だった。
この日ほど、スティーブ・ジョブズに感謝したことはない。
iphoneを購入した日の夜、家族は夕食を済ませ、
リビングでのんびり過ごしていた。
私の家族は、父、母、私、弟の四人家族だ。
家族の各人は、家の中で各々の定位置を持っている。
父は、床にクッションを置き、右側を下に向け、横になる。
弟は、リビングの大きなテーブルにある椅子に座る。
母は、ソファーの右側の肘掛けに背もたれ、足を中央側に向けている。
私は、ソファーの左側の肘掛けに背もたれ、足を中央側に向けている。
私と母は、ソファーの上で体操座りのようにして向き合っているのだ。
kappaのロゴの逆バージョンのような格好だ。
家族全員は、この日もいつものように定位置に着いていた。
iphoneを手にした私は、エッ◯な動画を見たくて仕方がなかった。
しかし、私は非常に賢い人間だ。
iphoneを手にしたその日に、定位置ではなく、自分の部屋に真っ先に向かえば、
他の家族から、
「アイツは、エッ◯な動画を見ている。」と思われてしまうことは分かっていた。
そこで私は、あえていつもの定位置に陣取りながら、動画を見ることにした。
「俺は、エッチな動画なんか見てないよ。iphoneの操作を一から確認してるだけさ。」
という無言のアピールをすることが出来ると考えたからだ。
幸運にも、私の定位置は、父と弟から画面を見られることもない。
無論、母親とは逆kappaの関係にある。見られるわけがない。
母が見ることが出来るのは、少し欠けたりんごマークだけだ。
私は、音量をゼロにして動画を見始めた。
しかし、その動画がなんとも長い。飽きてきた、、。
「早送りをしよう」とボタンを長押しした、
その時だった。
私の指が早送りのボタンの近くにある、音量のところに触れた。
早送りのボタンは音量で言うところの8割ぐらいポイントに設置されている。
休日に家族で過ごす平和なリビングに、エッ◯な音声が響き渡った。
私は、反射的に必死に音を消そうとした。
しかし、iphoneを購入した初日で、使い方がわからない。
エッ◯な音声だけが、無情にも響き続けている。
やばい、、。なんとかしなければ、、、。
何かしらのボタンを押すなりしないと、、、、。
私は、iphoneの右側についているボタンをカチッと押した。
画面は暗くなった。しかし、音が鳴り止まない。
この日ほど、スティーブ・ジョブズを恨んだ日はない。