色々の人生。 

何気ない出来事に面白い気づきがある。そんな気づきを残したい。お好みの話を見つけてみて下さい。

ウィンガーディアム・レヴィオーサ

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私の膝の裏には、30cmほどの大きな傷がある。

形は、ハリーポッターの額の傷とそっくりの稲妻模様。

 

この傷は、以前に書いた『人生初の手術の話』の時に負ったものである。

今回は、その術後の話を書きたいと思う。

 

手術後3日が経過した頃であろうか、

沢山の人達がお見舞いに来てくれるようになっていた。

 

中でも、学校の同級生は特別だった。見慣れた彼らの顔を見た途端、

手術の時に感じた恐怖や、思うように動かない足に感じていたストレス等、

全てを一瞬で忘れる事が出来た。

 

持つべきものは、”友”である。

 

彼らは、お見舞いの品も持って来てくれた。

・みかんゼリー

・エロ本3冊

 

私は、思った。

他に買ってくるものは、なかったのかと。

なぜ、入院すると、この2品が定番になるのであろうかと。

 

 確かにみかんゼリーは可もなく不可もなくである。

しかし、問題はもう一品の方だ。

 

彼らが来てからの入院生活は、必死にエロ本を管理する日々に変わっていった。

 

 

私の右膝は、6時間に及ぶ大手術をしたばかりである。

足は包帯でグルグル巻きで、一人で立ち上がる事も出来ない。

 

この状態で3冊のエロ本を、

お見舞いに来る両親や美人ナースに見つからずに管理し続ける事は、

非常に困難な事だった。

 

人は、何かを失うと、何かを手にする。

私は、身動きが取れない分、creativityを手に入れた。

 

私は、3冊のエロ本を自分のベッドの板とマットの間に忍ばせた。

終日寝たきりである自分の真下にあれば、常に管理出来ると考えたのだ。

 

その姿はまるで、賢者の石を守る3つの頭を持つ番犬のようだった。

いや、守っていたのは、石ではなく、賢者モードになるための魔本だった。

 

私には、守らなければならないという”賢者の意思”があった。

 

 

 

 術後1週間が経過した頃、

私は、車椅子で移動する事が出来るまでに回復していた。

 

移動可能となった私は、少しばかり羽を伸ばしに、

病室の外にある公共スペースに繰り出した。

 

「やっぱり、外の景色の眺めは、なんだか気持ちいい。」

 

・・・??

 

何かが見えた。外の景色を眺めていた為、直視は出来なかったものの、

私の間接視野に何かが確実に見えた。

 

 

病室の清掃員の方々だった。

 

シーツ、枕、ベッドマットなどを交換する大掛かりな清掃が始まっていたのだ。

 

「終わった、、、。」

 

私のベッドの下には、3冊の魔本が隠されている。

私は、マグルではない。魔法使いである事がバレてしまいかねない。

 

祈る事しか出来なかった。

 

清掃が終わり、恐る恐る病室に戻ってみると、

隠していたはずの3冊のエロ本が、ウィンガーディアム・レヴィオーサしていた。

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 清掃員の方々が綺麗にベッドメイキングしてくださったそこに、

綺麗に3冊の魔本が表紙を上にして置かれていた。

 

私の秘密の部屋は、完全に開かれてしまっていた。

この日の夜は、さすがのバジリスクも大人しかった。

 

こんなにも、透明マントがあったら被りたいと思った日はない。

 

 

 

 

 

10万円のイチゴ狩り

関連画像

 

 

大学1年の11月に運転免許を取得した。

 

教習所を卒業する時、

「免許取ってから沢山運転した方が上手くなるよ!」

「安心して運転しなくなるとペーパーになって忘れちゃうからね」

と教官から最後のお言葉を頂いた。

 

自分は、とにかく免許取得後も運転を続ける決意をした。

 

なぜなら、皆さんが思ってる以上に、大学1年次に運転免許を持っていることは、

同級生の男の中では、アドバンテージであり、ステータスになり得たのだ。

 

シンプルに言えば、モテるはずなわけだ。

 

猛練習の挙句、そこそこの運転スキルを身につけた3月、

ずっと気になっていた中学時代の女友達を乗せることにした。

 

「免許取ったんだ!!」

「まぁ〜ね〜」

 

「イチゴ狩り連れてって!」

「あぁ、いいよ〜」

 

可愛い女の子に「イチゴ狩りに連れていって♡」と言われて断る男がいるだろうか。

私は、甘い甘いイチゴを目指してドライブする事が決まったのだ。

 

 

出発の数時間前、

女の子を乗せる前の男の下準備が始まった。

 

まずは、とにかく匂いチェックだ。ファブリーズを振り撒きまくった。

次に、小さなゴミの除去。謎のゴミが落ちていたりする。

そして、ナビに目的地をセット。道をミスるのは、最高にダサい。

最後に、洗車をしてピカピカに。彼女が車を見た時の第一印象が一番大事だ。

 

準備は完璧だ。これでイチゴと彼女を同時にもらった〜〜!と浮かれていた。

 

 

そして、待ち合わせ時間に彼女を拾い、イチゴ狩りドライブがスタートした。

完璧な下準備をしたこともあり、目的地手前まではスマートに到着した。

 

しかし、目的地手前で私に試練が訪れた。

私たちが登って来た山道から、イチゴ狩りが出来るビニールハウスに行くためには、

傾斜50度ぐらいの短い坂を登らなければならなかった。

 

しかもその坂には、真っ直ぐ侵入出来ない。

ほぼ180度曲がりながら侵入するしかなかった。

 

豊洲のヘアピンカーブのインコース側のような曲がり具合だ。しかも、傾斜50度近くある上に、ほぼ車幅と同じぐらいの道幅だ。

 

免許取り立ての私には、相当難易度が高かった。

しかし、助手席には彼女が乗っている。言い訳は出来ない。

 

ミスは許されないと思った。

いや、チャンスとすら思った。

 

なぜなら、この坂を登る事の難しさは、彼女も確実に感じていたはずだ。

だからこそ、この坂を涼しい顔で登りきる事が出来た時、

彼女は、イチゴなんかよりも私を欲しがると思ったのだ。

 

いざ決戦の時が来た。

とにかく一番重要なのは、ゆっくりでもいいから車に傷を付けず、登りきる事だ。

 

一番リスクが高いのは、車の両サイドだ。ほぼ車幅と同様の道幅しかない。

少しでもハンドルを切り過ぎれば、車はズタボロになる。

 

そろ〜りと車を進め、坂に車の頭部分が侵入し始めた。

車の両サイドを気にしながら進めていた時、想像以上に50度の傾斜が私達を苦しめた。

 

クリープ現象だけでは、車が坂を下ってしまうのだ。適当な加減でアクセルを踏む必要があった。

 

頭の中で気にしなければならないポイントが増えて来た。

しかし、私だって何ヶ月間も座学と実技を重ねて免許を取得したのだ。

ナメてもらっては困る。

 

なんとかあと一歩のところまで来た。

 

車の両サイドを擦る心配は無くなった。

あとは、アクセルを踏み込み、一気に坂を駆け上るだけだ。

 

最難関を超えて、助手席の彼女を見ると、

「かっこいい〜!!!!」って言う目をしているように見えた。

 

私は、アクセルを勢い良く踏んだ。

 

「ガッガッガッ、ガリバリバリ、ッガッガン」

 

・・・????

 

体に響くような大きな音がした。確実に何かが起きていた。

しかし、確実に車の両サイドは擦っていない。最難関はクリアしているはずだ。

 

降りて確認したいが、傾斜50度の坂を登っている途中だ。

車を停めて、降りることも出来ない。とりあえず、坂を登り切ることにした。

 

その時の彼女の顔は、赤くなる前のイチゴみたいな色をしていた。

 

坂を登りきったところで、私は車の周りを確認した。

まずは、運転席側のサイド。何もなっていない。

次に、車の前方を回って、助手席側のサイド。何もなっていない。

やはり、何かの間違いか。

車の後ろに回った。私は、寒気がした。

 

車の後ろ部分の部品が外れまくっていたのだ。取れた部品が地面に垂れ下がっている。

 

車の後ろを擦ったのではなく、車体の後ろ側の下の部分が50度の傾斜によって地面に接触していたのだ。その状態で勢いよくアクセルを踏んだため、車体の下の部分を擦りながら坂を駆け上がってしまったのだろう。

 

「ヤベーやっちまったww ま、でも帰るのに影響はなさそうだから余裕だろ、、!」

 

なんとも痛々しい。

その時の私の顔は、赤くなる前のイチゴみたいな色をしていたことだろう。

 

しかし、今ここで考えたところで解決策はない。

 

とにかく、まずはイチゴを狩ることにした。

ビニールハウスに入り、受付をしようと「大人2人で!」と言うと、

 

「今日は、終わってしまいました。」と一言。イチゴ狩りは出来ませんでした。

ある意味、今日の私は、終わってしまいました。

 

彼女もさすがにガッカリしていた。

結局イチゴ狩りもせず、彼女を家に送り届けた。

 

そして、私は家に帰り、両親にボロカスに怒られました。

「修理費は、あなたの成人祝いから出します。」

 

私は、1月に成人して、親戚から成人祝いをもらっていたが、

全て失ってしまいました。

 

これが、私の10万円の成人祝いで買った思い出です、、。

 

最後まで、読んでいただいて、

センキュー ベリーベリーベリー マッチ。

 

 

 

 

iphoneを手にした愚かな男の話

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iphoneを初めて買ってもらった時、

何か長年背負ってきたプレッシャーから解放されたような気がした。

 

「今日から、いつでも、どこでも、見放題だ!!」

 

勘の鋭い人や、男子学生ならお気づきだろう。

無論、エッ◯な動画のことだ。

 

「見放題だ!」ぐらいで気づいた人がほとんどではないだろうか。

 

女性の方には、分からないかもしれないが、

男性にとっては、人生の最重要事項と言っても過言ではない。

 

私は、このiphoneという最新機器を手にすることを心待ちにしていた。

 

iphone購入以前も携帯を持っていたが、

やはり大きな液晶で解像度の高い映像を見れることは、技術革新だった。

 

この日ほど、スティーブ・ジョブズに感謝したことはない。

 

iphoneを購入した日の夜、家族は夕食を済ませ、

リビングでのんびり過ごしていた。

 

私の家族は、父、母、私、弟の四人家族だ。

家族の各人は、家の中で各々の定位置を持っている。

 

父は、床にクッションを置き、右側を下に向け、横になる。

弟は、リビングの大きなテーブルにある椅子に座る。

母は、ソファーの右側の肘掛けに背もたれ、足を中央側に向けている。

私は、ソファーの左側の肘掛けに背もたれ、足を中央側に向けている。

 

私と母は、ソファーの上で体操座りのようにして向き合っているのだ。

kappaのロゴの逆バージョンのような格好だ。

 

 

家族全員は、この日もいつものように定位置に着いていた。

iphoneを手にした私は、エッ◯な動画を見たくて仕方がなかった。

 

しかし、私は非常に賢い人間だ。

iphoneを手にしたその日に、定位置ではなく、自分の部屋に真っ先に向かえば、

 

他の家族から、

「アイツは、エッ◯な動画を見ている。」と思われてしまうことは分かっていた。

 

そこで私は、あえていつもの定位置に陣取りながら、動画を見ることにした。

「俺は、エッチな動画なんか見てないよ。iphoneの操作を一から確認してるだけさ。」

という無言のアピールをすることが出来ると考えたからだ。

 

幸運にも、私の定位置は、父と弟から画面を見られることもない。

無論、母親とは逆kappaの関係にある。見られるわけがない。

母が見ることが出来るのは、少し欠けたりんごマークだけだ。

 

私は、音量をゼロにして動画を見始めた。

しかし、その動画がなんとも長い。飽きてきた、、。

 

「早送りをしよう」とボタンを長押しした、

その時だった。

 

私の指が早送りのボタンの近くにある、音量のところに触れた。

早送りのボタンは音量で言うところの8割ぐらいポイントに設置されている。

 

休日に家族で過ごす平和なリビングに、エッ◯な音声が響き渡った。

私は、反射的に必死に音を消そうとした。

 

しかし、iphoneを購入した初日で、使い方がわからない。

エッ◯な音声だけが、無情にも響き続けている。

 

やばい、、。なんとかしなければ、、、。

何かしらのボタンを押すなりしないと、、、、。

 

私は、iphoneの右側についているボタンをカチッと押した。

画面は暗くなった。しかし、音が鳴り止まない。

 

この日ほど、スティーブ・ジョブズを恨んだ日はない。

 

 

 

 

人生初の手術の話

 

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私の特技は、サッカーだ。

4歳から始めている。

 

今でこそ、偉そうにエッセイなるものを書いているが、

昔は県内の強豪チームに所属しており、そこそこ優れた選手だった。

 

そんなサッカー全盛期の高校一年次、

自分の右足が思うように動かせなくなっている事に気づいた。痛みも酷い。

 

数分間走るだけで、右足全体にガスでも注入したのかと言う程、

何かが蓄積され、足全体が痺れる。

 

「これは間違いなく、やばい・・・。」そう思った。

けれどもプレーを続けていた。いや、続けざるを得なかった。

 

運動して来た人ならば経験があると思うが、部活やクラブチームでは、

多少の怪我であれば「気持ちの問題だ!!」と言われ、休む事が出来ない。

 

アホなのか。

 

「足が痛い」と言っているのだ。

どう考えても「身体の問題だ。」

 

あまりの痛さに病院に行くと、「身体の問題」であると診断された。

しかし、この診断が非常に曖昧なものだった。

 

「何かが起きている事は、間違いありません。」と医者は言った。

その言葉を聞いた時、私も医者になろうかと思った。医者と同意見だったのだから。

 

しかし、その曖昧な診断は、

医者が藪医者である事を証明するのではなく、私の怪我の厄介さを証明していた。

 

様々な検査をしたが、原因が全く分からなかったのだ。

 

「ひとまず、手術をして中を見てみましょう。治療が出来れば、そのまま行います。」

やっぱり医者は凄いと思った。自分の医者への夢は絶たれたのだった。

 

こうして、私の人生初の手術が決定した。

 

私は、手術を全く恐れていなかった。

眠っている間に、この厄介な怪我を治してくれるならラッキーぐらいに思っていた。

 

しかし、とある先輩に手術が決まった事を話していた時に、

先輩が発した一言によって、私の不安が爆発的に大きくなったのだ。

 

「ほぉ、手術するのか。すぐ終わるよ!ちん管はあるけど。」

 

 

私は、その一言を聞き逃さなかった。「ちん管?それは、何ですか?」

 

「ち◯ち◯に管を入れるんだよ!医者から聞かなかった?」

 

 

人生が終わったと思った。

足の怪我への不安は、完全に何処かへ消えた。

 

 

私は、医者をこれでもかと質問攻めにした。

 

・何のために入れるのか?

・どのタイミングで入れるのか?

・入れるからには、抜くのだよね!?

・入れるのと、抜くのはどちらが痛い?

・そもそも、痛い?

・ってかそもそも、入れないといけないの?

 

 

医者は、私の質問に一つ一つ丁寧に答えてくれた。

 

どうやら、その管は、尿を排出するためのものらしい。

麻酔が抜けきるまでは、尿をする事が困難になるのだ。

管を入れるのは、全身麻酔で眠っている間に済ませてくれるらしい。

そのため、抜く時だけ、痛みを我慢すれば良かった。

 

しかし、それでも怖かった私は、管を入れない選択肢はないのかと交渉した。

すると、医師は「術後に自力で排出できれば、問題ないです。」と答えた。

 

それならばと私は、管を入れることもなく、抜くこともない、

一石二鳥な選択肢を選び、手術に臨んだ。

 

手術は6時間にも及ぶ大手術だった。

医者の想定よりも長時間の手術だったため、麻酔の量も増やしたのではなかろうか。

 

病室のベッドで目覚めた私は、意識が朦朧とする中、尿意を感じた。

右足は包帯でぐるぐる巻きにされているため、尿器を手渡されていた。

 

私は決死の思いで尿器を当てがったが、、、出ない。

初めての感覚だ。したいのに、出ない。

 

しかし、ここで排出できなければ、間違いなく、ちん管である。

それは避けたいと思ったが、数時間もすると、膀胱は破裂寸前だった。

 

尿との戦いに負けた私は、ナースコールを手に取り、

「すいません、おしっこが出ません。」

 

ナースが駆けつけると、手には管を持っていた。

 

どうせ入れられ、抜かれるのであれば、

せめて入れる時は、眠っている時にしてもらえば良かったと後悔しても遅く、

 

夜中皆が寝静まる中、私のベッドだけには少しばかりの明かりがついていたのでした。

 ちなみに、入れるよりも、抜く方が全然痛くなかったのです。

 

ー管ー

凄腕美容師と新米美容師

 

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私には、行きつけの美容室がある。

 

しかし、表参道や原宿など小洒落た場所ではない。

最寄り駅にあるチェーン店だ。

 

ここの女性店員は皆綺麗である。お気に入りの子もいる。

それが、通い続ける理由となっていることは、容易に想像できるだろう。

 

運良く彼女が、私のシャンプー担当になった時は、

「もう、このまま一生洗い続けてくれ。」心の底からそう思うのだ。

 

だが、最大の理由は、私の髪型を3年間担当してくれている男の美容師の腕に、絶大なる信頼を置いていることにある。

 夏になると、湿気でネジのような前髪になるほどの癖っ毛を、見事にそこそこモテそうな髪型に仕上げてくれるのだ。

 

 

美女店員と凄腕美容師がいる美容室で過ごす時間は、月に一度の至福の時であった。

 

 

 

しかし、そんな私の楽しみをぶち壊しにする新米美容師が現れた。

 

彼は、私の担当である凄腕美容師の元で研修期間を過ごすことになり、

 そのため、私のシャンプーを常に担当することになったのだ。

 

あれからというもの、美女店員に頭をゴシゴシされることはなくなってしまった。

 

こんなことになるのであれば、

ちゃんと最後のゴシゴシを噛み締めておけば良かったと後悔をしても、もう遅かった。

 

新米の彼のシャンプースタイルは、非常に独特なものだった。

まず、普通の美容師であれば、顔に布をかけてくれる。

水の飛び跳ねを防ぐと同時に、常にお互いに顔を見合わせなくて済むからだ。

 

しかし、彼は布を一切かけない。

飛び跳ねた水は、全部私の顔にかかっている。

 

さらに、彼は顔を見合わせるどころか、めちゃめちゃ話かけてくる。

自分もそれに答えようと話すが、口を開けた時に、飛び跳ねた水が入ってくることが

不快でしょうがなかった。

 

シャンプーを終えると、凄腕美容師にバトンタッチし、

いつも通り見事に綺麗に仕上げてくれた。

 

そして再び、新米の彼にバトンタッチすることになった。

 

すると彼は、「それでは、もう一度洗い流しますね」と言って、

 

私の切られた髪の残骸が沢山乗ったカットクロスを華麗に取り外し、

 見事に私の足首に全てぶち撒けて見せたのだ。

 

しかも気づいていない。

 

切られた髪の毛達が、ロールアップしたことでチラ見せしていた白い靴下に惜しみもなく付着した。

 

そして私は、チクチクする足首を気にしながら、再び地獄のシャンプー台へと向かった。

 

カフェ勤務のエース店員

「タリーズエプロン 画像」の画像検索結果

 

 

カフェで働いて、3年が経つ。

 

誰よりもミスが多く、お客様とバイト仲間に迷惑をかけていた自分は、

今やベテランの域に達していた。

 

360°どこから見ても美しいドリンクを作る力、

お客様のニーズを的確に掴む力、

新米を育てる育成能力、

気持ちの良い接客など、様々なスキルも身についていた。

 

店舗内では、勤続年数・スキル共に、エース級だった。

 

エースともなると、常連さんとの世間話にも花を咲かせる。

お互いに顔見知りになるのだ。

 

「今日も、美味しかったよ。」

「いつも、ありがとうございます!」

 

「カフェラテのショートサイズで!」

「あれ、珍しいですね!今日もソイラテじゃないのですか?」

「たまには、新しいのに挑戦しようと思ってね!」

 

こんな具合だ。

 

 

エースは、休日のシフトインが多いのも特徴だ。

休日は、店内が激混みになるため、エースが必要なのだ。

 

そんな私は、今日も休日にシフトイン。

しっかり2時間働いて、裏の事務所で休憩をしていた。

 

「いらっしゃいませ〜!」

「店内ご利用のお客様は、お先にお席の確保をお願い致します〜!」

「コンアモーレー!」

 

他の店員の声が、店内の激混み具合を物語っていた。

 

休憩が終わり、エプロンの紐を力強く結び、激混みの表舞台に再び向かった。

エースともなれば、エプロン1つとっても、美しく着こなすのだ。

 身なりを整える事が、気持ちを引き締める為には必要だと知っているからだ。

 

だって、私はエースなのだから。

 

 

休憩後、自分のポジションは、レジ打ちだった。

休憩を挟んだせいか、まるでピアノを弾くように、

流れるようなレジ打ちを披露して見せた。

 

商品を購入する為に列をなしているお客様も、自分の方を見ている。

特に、自分の胸元につけている名札を見ているように感じた。

 

「あの店員は凄い!! 一味違う!!!」

「この有能な店員の名前は、なんていうんだろう?」

 

そんな風に思っていたのかもしれない。

 

そして、あるお客様がついに、

私の胸元を指差しながら大きな声で話しかけてきた。

 

「あの〜。エプロン裏表になってますよ。」

 

「・・・・。」

 

自分の目を疑った。

エプロンに付与された店のロゴは、刺繍のされた側がむき出しで、汚らしい。

胸元に身につけていた名札も見事に、安全ピン側が見えていた。

ちっとも名前なんて見えてやしなかった。

 

 

ま、ま、まぁエースともなれば、『あえて』エプロンを逆に身につけ、

お客様の笑いも取る事が出来るのだ。

 

そ、そう、『あえて』である。

 

 

そんな強がりを態度で見せたものの、

恥ずかしさを紛らわすことは出来なかった。

 

後輩たちの笑い声が聞こえる。列をなすお客様の笑い声が聞こえる。

 

これほどまでに、裏の事務所に引き返したいと思った事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画と舞台

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母に誘われ、舞台鑑賞をすることになった。

 

大好きな俳優が出ることもあり、

23歳の落ち着きを見せながらも、心は高鳴っていた。

 

母と私は、早めに会場に着いたため、近くの喫茶店に入った。

舞台鑑賞の前に、喫茶店で一息とは、何とも「それっぽい」感じがした。

 

母は、チーズトースト・ホットコーヒー。

私は、シナモントースト・アイスコーヒー。

 

・・・・?

 

何だか、『喫茶店』メインの話になってしまいそうなので、

早めに話を戻そうと思う。

 

ただ、とにかく絶妙に美味しかったのだ。

 

 

母と私は、会場に戻り、自分達の席に着いた。

ローソン予約した一般席なので、、、と思っていたが、

舞台のど真ん中の絶好のポジションだった。

 

ちなみに、先の喫茶店でコーヒーを楽しんでいた老夫婦も会場に来ており、

ど真ん中の最前列に着席していた。

あの喫茶店には、不思議な力があるのかもしれない。

 

 

舞台が始まった。

 

私は、一気に魅了された。

初見だったこともあるが、確実に魅了されていたのだ。

 

どこに魅力を感じたのか。

 

話の内容は勿論であるが、

 

『舞台』という、システムというか、メディアというか、構造に興味を持った。

 

「映画とは、全然違う。」そう感じたのだ。

 

映画は見る。舞台は観る。映画はseeで、舞台はlookなのではないか。

(英語の単語の知識は、ないので、あまり深く突っ込まないで下さい。)

 

映画は、監督が見せたいと思った人物・事象にフォーカスが当たる。

舞台は、自分が観たいと思った人物・事象にフォーカスを当てるのだ。

(映画や舞台の種類によるとは、思うが・・・)

 

私が舞台をオモシロイと感じた最大の理由は、

この『主体的な鑑賞スタイル』にあるのだと分かった。

 

話は、以上である。

 

「だから、どーした!!」「オチがないじゃないか!!!」

確かにその通りだ。

 

ただ、『主体的な鑑賞スタイル』がオモシロさには必要であることが分かった事は、

何だか今後に活かせそうだと思ったわけです、、。